休日の八百屋で

 今日は仕事が休みの日で、昼前にお気に入りの八百屋さんに行ってきた。お気に入りの八百屋さんは、家から自転車で十分ほどのところにあって、おしゃれでもなんでもない一見ふつうの八百屋さん。でもたとえば、茄子が大沢さんのと小野さんのと二種類あったり、冬になれば周りがぼろぼろで、これ大丈夫? といっしゅん怯むような白菜(霜降り白菜といって、甘みを出すためにわざと、霜にあててるそう)が置いてあったりと、味わい深いお店なのである。

 今日行くと、八百屋のおじちゃんに、これから月曜の昼は別のところでちょっと商売してみようと思う、という話をされる。以前から、月曜日はほんとうにお客さんが来なくて、という話をときどき聞いていて、その度に「場所が悪いよ・・・」と心の中で思っていたのだが、今日は昼前に来店したわたしが初めてのお客さんだったそうで、よっぽきついみたい。それで、

八百屋さん「会社で働いてて、暇だったら、今日休みますって言うでしょ?」

わたし「言いますね」

八百屋さん「休んだら何する?」

と訊かれ、翻訳するか本読むか、と思いつつも、そんなこと言うとあれだなぁと思って、旅行しますね、と定型的なことを言うと、

「やあ、それもあるかもしれないけどさ、ほら」

と言われ、ああ別の仕事をするっていうことか、とやっと話を理解して、すると同時に、なんでわたしってこういうとき定型文の嘘を言っちゃうんだろう、ほんとうのことを言えば、話があってたのに、と残念になって、

「あ、別の仕事しますよね、します、します」と慌てて答える。

すると、八百屋さんは

「会社で働いてたとしても、ぼくは片足しかつっこまないよ。もちろんがんばるよ、がんばらないと自分に返ってくるし、でも会社が潰れたらそれは会社のせい」

と言い、八百屋さんのその言葉で、がんばることと尽くすことは別ものなのだ、とこれまで言葉にならなかったことが言葉になった。