十二月の蚊

 なにかの比喩ではなく、蚊がいる。十二月の夜に、である。

 寝床につくと、プーンという懐かしい音がして、ガバッと起きて目の焦点を調整する。すると姿を捉えることができた。全盛期に比べると、動きのもっさりとしたやつである。こちらもあのころに比べてもっさりした動きでよけながら、あのころの殺意を蘇らせることもなく、電気を消して、眠る。