風呂場の壁と天井のさかい目に、蜘蛛がいる。
いるな、と思いながら、一週間、二週間経ち、すると蜘蛛の表面を白いもやもやしたものがおおいはじめ、これはカビだろうか、と思いながら一週間、二週間経ち、ついに決心して蜘蛛を取り払うことにする。
トイレットペーパーをちぎり、背伸びをして、白いもやもやごと蜘蛛をつかむ。
と、とつぜん手の中にサササという動きを感じ、驚いてトイレットペーパーを放りだす。
息をついて、風呂場の床に落ちたトイレットペーパーをそっと持ち上げて見ると、蜘蛛はまだトイレットペーパーにしがみついている。トイレットペーパーごと、ベランダに置く。
動きがなくても、カビが生えても、生き続けている、ということにちょっと感動する。