イタリアの新刊(2023年8月~9月上旬)

2020年からTwitterで、気になるイタリアの新刊情報をツイートしてきたけれど、あそこがなんだか使いづらいものになってしまったので、引っ越しを検討。そしてここに移ってみた。今思えば140字におさめるために、いらぬ苦労していたかも・・・。
引っ越し先を悩んでいたあいだに刊行されたイタリアの気になる新刊をまとめて。

  • ジョルジョ・アガンベン『人の声(La voce umana)』(Quodlibet, 2023/8/30)
    さまざまな著作のなかで主要モチーフとしてきた「声」をテーマに、ついにアガンベンが一冊の本を書いた、ということのよう。
    「本書は、入念な考古学的研究をつうじて(中略)声と言語活動、名詞と談話、名づけることと意味すること、これらそれぞれの関係を問い直し、そうすることで声の『分節』の意味と様態を再構築する。じつのところ、声の中に言語活動を位置づけることが意味するのは、音と意味を分節するということだけではなく、生きる者と喋る者、身体と精神、自然と歴史を分節することでもあるのだ。ゆえに、声についての考察は、人間の本性についての考察と分かち難く、この意味において、本質的に政治的な問題となる。なぜなら、人間的なものとそうではないものの決定がつどつど関わるからである」(出版社の紹介文より)

 

  • ロベルト・ボンキオ著『控えめな出版人(Un editore discreto)』(Bordeaux, 2023/9/4)
    イタリアの出版社Riunitiの創設者ボンキオの自伝と思われる。しかしボンキオ氏は2010年に亡くなっているので、過去に書いた文章を集めたものなのかも。
    出版社Riuniti1953年にイタリア共産党の出版社として誕生。グラムシマヤコフスキーの本の普及に貢献してきてきたとのこと。この出版社のウェブサイトはよくチェックしてたけれど、このような出自の出版社とはぜんぜん知らなかった。


  • エマヌエーレ・トレヴィ著『魔法使いの家(La casa del mago)』(Ponte alle Grazie 2023/9/5)
    2021年にストレーガ賞を受賞した著者の最新作。著名な精神科医であった父マリオ・トレヴィとの関係をテーマにした自伝的小説らしい。エマヌエーレにとって、父マリオは魂を治療する魔法使いのようだった。父マリオの死後、父が書斎としていたアパートに移り住み、父の謎を解く、あるいは謎を一層深め……。

 

  • ティツィアーノ・スカルパ著『真実とボールペン(La verità e la biro)』(Einaudi 2023/9/12)
    2011年に河出書房から中山エツ子さんの訳で小説『スターバト・マーテル』の出た著者の新刊。 奇妙なタイトル。小説、告白録、エッセイ、回想録、瞑想録でもあるような本とのこと。
    人生で、真実を語ってくれる人はそういない。しかし真実は、手帳に記したボールペンの文字のように、肌にしっかりと刻まれている。著者は、これまでの人生で、物事のほんとうのところを語ってくれた人を思い返す。もっとも印象的だったのは、大学時代の哲学科の女の子。彼女は、ベッドでの苦しみを、まさに著者とベッドにいながら逐一ライブで誠実に語ってくれた。この子を筆頭に、これまでの人生で出会った、真実を語ってくれた人々を思い返す……。おもしろそう。


  • フメッティブルッティ、フランチェスコ・ピッコロ著『La separazione del maschio(男からの別離)』(Feltrinerri, 2023/9/12 )
    2008年にエイナウディから出た小説をフメッティブルッティがマンガ化。主人公はよき父でありながら、たくさんの恋人を持つ男。

 

  • "Il magico studio fotografico di Hirasaka" (Einaudi, 2023/8/29)
    柊サナカさんの『人生写真館の奇跡』のイタリア語訳。翻訳は Gala Maria Follaco さん。

 

こんなところで公開してみようと思っていたのに、ジュンク堂でイタリアの本の邦訳を二つ見つけたので追加。

  • ベアトリーチェ・サルヴィオーニ著、関口英子訳『マルナータ 不幸を呼ぶ子』 (河出書房新社、2023/8/29)
    今年の3月にイタリアで刊行され、「ヨーロッパ各国で同時刊行、32言語に翻訳中というすごい新刊を見つけました」とツイートした本の邦訳がもう出ていた。早い。

  • ベッピ・キュッパーニ著、中嶋浩郎訳『救い』(みすず書房、2003/9/1)
    知らない作家、知らない作品……と手にとって訳者あとがきを読むと、著者は漫画家ヤマザキマリさんの配偶者で、イタリアでの刊行はなく、邦訳ではじめて刊行ということらしい。戦国時代の日本が舞台の歴史小説。どうなんでしょ。

ほんとうにこんなところで。
あれもこれもと追加したくなって、公開のタイミングが難しいものだ。